FLIR GF320 簡易取扱説明書
ガス検知カメラ FLIR GF320 の基本的な操作方法をまとめています。詳しい内容はメーカー発行の取扱説明書をご確認ください。
1. はじめに
FLIR GF320 は、目では見えないガスを可視化する赤外線カメラです。一般的なサーモグラフィカメラは対象物の温度分布を画像にしますが、ガスや気体は赤外線をそのまま透過してしまうため写りません。
GF320 は、バンドパスフィルターによって特定の波長帯だけに感度を絞っています。その波長で赤外線を吸収する性質を持つガスが背景の赤外線を遮ると、周囲との明暗の差としてガスが浮かび上がります。
ガスの温度は測定できません。映し出されているのはガス自身が発する赤外線ではなく、背景の赤外線がガスに遮られた結果です。GF320 でガスの温度を測ることはできません。
本書の説明は、すべて白黒表示での使用を前提としています。
2. 安全上のご注意
バッテリーについて
- 分解・改造をしないでください。穴を開けたり、強い衝撃を与えたりしないでください。
- 火の中や近く、直射日光の当たる場所、高温になる場所に置かないでください。
- 水や塩水に浸けたり、濡らしたりしないでください。
- 充電は指定された充電器のみを使用し、0℃〜45℃ の範囲で行ってください。
- 異臭・発熱・変色・変形など異常が見られた場合は使用を中止してください。
カメラ本体・レンズについて
- 冷却中はカメラを操作しないでください。ボタンを押したり電源を切ったりしないでください。
- 赤外線レンズには反射防止膜が施されています。清掃の際に力を入れ過ぎないでください。
- 本体・ケーブル・付属品に溶剤や類似の液体を使用しないでください。
- レーザーポインターを人や動物に向けたり、光線を覗き込んだりしないでください。
3. バッテリーの充電・装着と取外し
充電する
付属の電源ケーブルをカメラに接続して充電するか、スタンドアロンバッテリー充電器を使用します。はじめて使用する前は、約4時間、またはバッテリー状態 LED が緑色に点灯し続けるまで充電してください。充電中は LED が緑色に点滅します。
装着する
- バッテリーケースのカバーを開きます。
- バッテリーを挿入口に差し込みます。
- 奥まで確実に押し込みます。
取り外す
- バッテリー取り出しツマミ(解除ボタン)を操作します。
- バッテリーを引き抜きます。
4. SDメモリーカードの挿入
撮影した静止画・動画は SD メモリーカードに保存されます。カメラ背面のコネクタ部用カバーを開き、カードスロットに SD メモリーカードを差し込んでください。
5. 各部の名称と機能
左側面
- 1プログラムボタン(あらかじめ割り当てた機能を呼び出すボタン)
- 2温度レンジボタン(温度計マーク)
- 3モードホイール
- 4レーザーボタン
- 5赤外線カメラとデジタルカメラの切り替えボタン
右側・上面
- 1ハンドル
- 2レーザーポインター
- 3デジタルビデオカメラ
- 4デジタルカメラのランプ
- 5S ボタン(プレビュー/保存)
- 6A/M ボタン(自動・手動・HSM の切り替え)
- 7フォーカスボタン(左右でフォーカス調整、中心を押すとオートフォーカス)
- 8ハンドストラップ
- 9手動フォーカスリング
- 10赤外線レンズ
背面
- 1ビューファインダー
- 2視度補正ノブ
- 3コネクタ部用カバー
- 4バッテリーケース用カバー
- 5バッテリーケースカバーの解除ボタン
- 6USB-A コネクタ(外部 USB デバイス用)
- 7電源 LED インジケータ
- 8電源ボタン
- 9ジョイスティック(上下左右で移動・値の変更、押して決定)
- 10メニューボタン(戻るボタン)
6. カメラの起動と冷却準備
GF320 は赤外線検知器を冷却してから使用します。電源を入れてすぐには撮影できません。
- 電源ボタンを押して放します。電源 LED インジケータが緑色に点灯します。
- 数秒で冷却音が始まります。静かなエンジンのような音で、異常ではありません。
- 画面右上に冷却の残り時間が表示されます。そのままお待ちください。
- 冷却が完了すると音が少し小さくなり、撮影できる状態になります。
冷却準備中の画面。赤枠の位置に残り時間が表示されます。
冷却にかかる時間は約7分です。室温が高い場合は、これより30%以上長くかかることがあります。冷却が完了するまで、ボタンを押したり電源を切ったりしないでください。
冷却が完了するまでの間、画面の温度表示は正しい値を示しません。検知器が冷えていないためで、故障ではありません。
7. カメラモードの選択
カメラ左側面のモードホイールを回して、使用するモードを選びます。
- 1カメラ(静止画の撮影)
- 2ビデオ(動画の記録)
- 3アーカイブ(保存したデータの表示)
- 4プログラム(一定間隔での自動保存)
- 5セットアップ(各種設定の変更)
ガスの流れを記録する場合は、静止画よりも動画の方が適しています。ガスは動いて見えるため、1枚の静止画では判別しにくいことがあります。
8. フォーカス調整
ピントが合っていないと、ガスの輪郭も対象物の輪郭もはっきりしません。撮影の前に必ず合わせてください。
- レンズキャップを外し、カメラを対象物に向けます。
- 脇をしめてカメラを固定し、ぶれないようにします。
- 手動フォーカスリングを回して、対象物の輪郭がはっきりする位置に合わせます。レンズの前方から見て時計回りで遠くに、反時計回りで近くに合います。
手動での調整をおすすめします。フォーカスボタンの中心を押すとオートフォーカスが働きますが、温度差の少ない場面では焦点が合いにくいことがあります。調整の際はレンズの表面に触れないようご注意ください。
9. 画像調整の切り替え(自動/手動/HSM)
A/M ボタンを押すたびに、画像の調整方法が 自動 → 手動 → HSM の順に切り替わります。現在の調整方法は画面右側に表示されます。
自動
明るさとコントラストをカメラが自動で最適に調整します。通常はこのモードで使用します。
HSM(高感度モード)
ガス検知のために用意されたモードです。感度を上げて画像を処理するため、自動では分かりにくいガスの輪郭がはっきりします。ガスを探すときはこのモードに切り替えてください。HSM 中はジョイスティックを左右に動かすと感度が変わります。見やすくなる位置を探しながら調整してください。
通常表示
HSM(高感度モード)
ライターから噴出させたガス(ブタン)を同じ条件で撮影したものです。HSM に切り替えるとガスの輪郭がはっきりします。
手動
画面に表示する温度の範囲を自分で決める方法です。ジョイスティックを上下に動かすと温度レベルが、左右に動かすと温度スパンが変わります。背景とガスの温度差が小さく、自動でも HSM でも見えにくい場合に、範囲を絞って試してください。
実際の運用では、自動と HSM のいずれかを使う場面がほとんどです。手動は上記のような場合の補助としてお使いください。
10. 温度レンジの設定
対象に合った温度レンジを選びます。カメラ左側面、プログラムボタンの後ろにある温度計マークのボタンで切り替えます。
- 温度レンジボタン(温度計マーク)を押します。
- ジョイスティックを上下に動かして、対象に適した温度レンジを選びます。
- もう一度温度レンジボタンを押して確定し、設定を終了します。
選択できる温度レンジ
| No. | 温度レンジ |
| 1 | -20℃ ~ 10℃ |
| 2 | -10℃ ~ 25℃ |
| 3 | 10℃ ~ 50℃ |
| 4 | 40℃ ~ 85℃ |
| 5 | 70℃ ~ 120℃ |
| 6 | 100℃ ~ 160℃ |
| 7 | 130℃ ~ 200℃ |
| 8 | 180℃ ~ 260℃ |
| 9 | 240℃ ~ 350℃ |
背景の温度に合うレンジを選んでください。GF320 はガスそのものの温度を測るカメラではありません。ガスの向こう側にある背景が画面の中でしっかり階調を持つように選ぶと、ガスとの明暗の差が出やすくなります。屋内での作業であれば 10℃ ~ 50℃ が目安になります。
11. 静止画の保存と動画の記録
静止画を保存する
- モードホイールを「カメラ」に合わせます。
- S ボタンを1秒以上押し続けると、プレビューせずにそのまま保存されます。
- S ボタンを短く押して放すと、プレビュー画面が表示されます。内容を確認してから保存できます。
動画を記録する
- モードホイールを「ビデオ」に合わせます。
- S ボタンを押すと記録が始まります。画面右上のタイマーに経過時間が表示されます。
- もう一度 S ボタンを押すと記録が止まり、プレビュー画面が表示されます。
- プレビュー画面で保存を選ぶと、SD メモリーカードに保存されます。
記録を止めただけでは保存されません。プレビュー画面で保存の操作を行ってください。また、1回の記録は30秒以下を目安にしてください。長く記録すると保存に時間がかかります。
12. パソコンへのデータ取り込み
保存した静止画・動画は、次のいずれかの方法でパソコンに取り込めます。
- SD メモリーカードを取り外し、パソコンに接続したカードリーダーに挿入する
- USB ケーブルでカメラとパソコンを接続する
いずれの場合も、ドラッグ&ドロップでファイルをパソコンへ移動できます。
13. ガスが見える条件と検知可能なガス
GF320 は、ガスが背景の赤外線を遮ることで生じる明暗の差を捉えています。そのため、背景とガスの温度差が大きいほど、ガスははっきりと見えます。
白黒表示では、高温の部分が白く、低温の部分が黒く表示されます。したがってガスは、背景温度が高い場合には黒く、背景温度が低い場合には白く映ります。
背景とガスの温度差が 2℃ 以下の場合は、可視化できないことがあります。見えにくいときは、背景との温度差がつく方向から狙う、HSM に切り替える、対象に近づくなどをお試しください。
また、ガスの濃度が低い場合や、ガスの層が薄い場合も見えにくくなります。濃度とガスの厚みの両方が、見え方に影響します。
GF320 で検知できるガス
GF320 が検知できるガスと、その感度は次のとおりです。同じガスでも、上記の条件によって見え方は変わります。
高感度(50 ppm×m 未満)
| ガス | 化学名 | 化学式 |
| メタン | Methane | CH4 |
| エタン | Ethane | C2H6 |
| プロパン | Propane | C3H8 |
| ブタン | Butane | C4H10 |
| ペンタン | Pentane | C5H12 |
| ヘキサン | Hexane | C6H14 |
| ヘプタン | Heptane | C7H16 |
| オクタン | Octane | C8H18 |
| プロピレン | Propylene | C3H6 |
| 1,3-ブタジエン | 1,3-Butadiene | C4H6 |
| ベンゼン | Benzene | C6H6 |
| トルエン | Toluene | C7H8 |
| エチルベンゼン | Ethylbenzene | C8H10 |
| メタノール | Methanol | CH4O |
| エチルアルコール | Ethanol | C2H6O |
| 酢酸 | Acetic acid | C2H4O2 |
| エチレンオキシド | Ethylene oxide | C2H4O |
| α-ピネン | Alpha-pinene | C10H16 |
中感度(150 ppm×m 未満)
| ガス | 化学名 | 化学式 |
| エチレン | Ethylene | C2H4 |
| エチレングリコール | 1,2-Ethanediol | C2H6O2 |
| ホルムアルデヒド | Methanal | CH2O |
| メチルエチルケトン | 2-Butanone | C4H8 |
| フェノール | Phenol | C6H6O |
| エチルヘキシルアクリレート | 2-Ethylhexyl acrylate | C11H20O2 |
低感度(250 ppm×m 未満)
| ガス | 化学名 | 化学式 |
| イソプレン | Isoprene | C5H8 |
上記以外のガスは GF320 では検知できません。対象のガスが一覧にない場合は、お問い合わせください。
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