サーモグラフィカメラ選び、その比較で本当に大丈夫ですか。

サーモグラフィ株式会社

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2026.8.5

サーモグラフィカメラ選び、その比較で本当に大丈夫ですか。

赤外線サーモグラフィカメラを毎日扱うプロ達のコラム 其の十

サーモグラフィレンタル|スペック表の数字だけでは本当に用途に合ったサーモグラフィは選べません

最近、サーモグラフィカメラ業界を見ていて、少し気になることがあります。低価格な製品が増え、サーモグラフィレンタルも含めて誰でも手軽に使えるようになりました。それ自体はとても良いことだと思っています。ただその一方で、スペック表の数字だけで機種が選ばれているケースが増えてきたように感じています。今回はその話を少し書いてみようと思います。

サーモグラフィカメラを比較する際、よく見かけるのが解像度・温度分解能(NETD)・温度精度・価格という4つの数字です。もちろんどれも重要な仕様ではあります。しかし、そもそもこれらの数字の細かな差が、実際の測定結果にどれほど影響するかというと、正直それほど大きくない場合がほとんどです。

温度分解能(NETD)が0.05℃と0.06℃の違いは、実際の熱画像を見ても人間の目では判別できないレベルです。温度精度も±1℃と±2℃の差は、サーモグラフィの実測においてはほとんど影響しません。もちろん±5℃や5%といった精度では話になりませんが、一般的な用途で使われる機種同士であれば、カタログスペックの細かな数字の差よりも、フォーカス方式やフレームレートの方が実際の測定結果にはるかに大きく影響します。それにもかかわらず、スペック表の数字だけを見比べて機種を選んでいるケースが非常に多いのが現状です。

しかし、本当にそれだけで機種を決めてしまって良いのでしょうか。

私どもがお問い合わせをいただく際、まず最初にお聞きするのは仕様の話ではなく「何を撮影・測定したいのですか?」「その結果から何を知ろうとしていますか?」という二点です。サーモグラフィカメラは普通のカメラではなく、温度を測定してその結果を判断するための計測機器です。何を撮影するかだけでなく、その結果から何を読み取りたいのかによって、必要な性能はまったく変わります。用途と目的の両方を確認しなければ、本当に必要な機種は判断できません。

その中で、スペック表では見落とされがちだと感じているのがフォーカス方式とフレームレートです。

フォーカス方式については、固定フォーカスのサーモグラフィカメラも増えてきました。用途によっては固定フォーカスで十分な場合もあります。ただ、サーモグラフィで重要なのは「撮影できるか」ではなく「その画像を根拠として判断できるか」です。固定フォーカスの場合、ピントが正確に合っていない状態で撮影されることが多く、その結果として正確な温度はもちろん、温度差の比較や左右差の判断が正しくできていないケースが少なくありません。熱画像として色は出ます。それっぽく見えます。しかし、その数値や色の差を根拠として使おうとした瞬間に、信頼性の問題が出てきます。解像度や価格ほど注目されていませんが、フォーカス方式はもっと重視されても良い仕様だと思っています。

フレームレートについては、「動いていなければ10Hz以下で十分」という説明を見かけることがあります。完全に静止している対象であれば間違いではありません。ただ、例えば人体を測定する場合を考えてみてください。人は完全に静止することができません。呼吸をしていますし、身体もわずかに揺れています。その結果、測定位置が微妙に変化して温度のブレが生じることがあります。額の温度を測定しようとしても、フレームレートが低いと呼吸や体の揺れの影響を受けて、正確な測定位置の温度が取得できていない可能性があります。個人的な参考程度であれば大きな問題にならない場合もありますが、その結果を報告書や研究資料としてまとめる場合、テレビ番組やCMの素材として使う場合、あるいは商品パッケージやカタログに掲載するデータとして第三者へ提示する場合は、話がまったく変わります。そのような用途では、10Hz以下ではなく30Hz以上のサーモグラフィカメラを選ぶことが基本だと思っています。

私が一番心配しているのは、実はお客様のことです。機材を提供する側が間違った知識のまま説明して、お客様がそれを正しいと信じて使い続ける。間違った測定方法で出た結果を、正しいデータとして報告書・テレビの比較番組・CM・研究資料に使い続ける。その間違いに誰も気づかないまま、結果だけが一人歩きしていく。これが一番不幸なことだと思っています。

メーカーにとっても、販売店にとっても、レンタル会社にとっても、そして私どものような専門会社にとっても、サーモグラフィという計測機器への信頼が損なわれることは決して良いことではありません。しかし何より、正しくない情報を信じて損をするのはお客様自身です。

とはいえ、サーモグラフィカメラは赤外線の知識や実際の測定経験が伴ってはじめて、適切な機種を選ぶことができます。スペックの数字だけで「この機種が最適」と断言することは、専門家であっても非常に難しいことです。だからこそ、撮影・測定したい対象は何か、どのような方法で測定したいのか、そしてどのような変化や結果を確認したいのかを、できるだけ具体的に伝えた上で、専門知識のある方に相談することが一番の近道だと思っています。

もし人体の測定と伝えているにもかかわらず、固定フォーカスや10Hz以下の機種を勧めてくる業者がいた場合は、別のところに相談してみてください。ただ、その方が嘘をついて儲けようとしているわけではありません。ただ知識や経験が少ないというだけです。赤外線の知識、サーモグラフィカメラの知識、そして実際の測定経験を持つ人間は、日本ではまだかなり少ないのが現状です。その点はどうか温かい目で見ていただければと思います。

もう一点、「人体測定の実績があります」と言われた場合も注意が必要です。間違った機種で撮影していても、熱画像として色は出ますし、それっぽく見えます。撮影した側も依頼した側も「うまく撮れた」と感じてしまうことがあります。実績があること自体は重要です。ただ、どのような機種でどのような条件で撮影したのかまで確認することが、それ以上に重要です。適切な機種で適切な条件のもと正確に測定できた結果と、間違った機種でそれっぽく撮れた結果は、まったく別物だからです。

高価な機種を勧めたいわけではありません。安価な機種を否定したいわけでもありません。用途によっては低価格なサーモグラフィカメラで十分な場合もあります。ただ、その用途で本当に判断できるのか、その結果を第三者へ提示して問題ないのか、そこまで考えて機種を選んでいただきたいと思っています。

サーモグラフィーレンタルをご検討の際も同じです。スペック表の数字だけでなく、「何を撮影して、どのような結果を知ろうとしているのか」という視点から機種を選ぶ。そして機材の知識だけでなく、赤外線そのものに対する知識と経験を持った相手に相談する。その文化がもっと広がってほしいと、最近よく考えています。

プロの現場に関わる者として、機材も知識も妥協しない。それが私どもの変わらぬ姿勢です。


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